書籍のご紹介・介護記録の学校(改訂版)

介護記録の学校(改訂版)

介護記録の学校(改訂版)

津田式ケアプラン活用法

日総研出版社より発行

改訂版第1刷:平成19年11月30日発行

【主な内容】

『介護記録の書き方』をていねいにやさしく解説。新人スタッフでも手に取るように理解できます。介護記録勉強会の教材にも最適です。

改訂にあたり

初版を発行した翌年の平成17年に「個人情報保護法」が全面施行され、平成18年度からは「介護サービス情報の公表」制度が実施されています。前者は記録の開示請求に応じなくてはなりませんし、後者はサービスの実績を記録物で確認されます。これらの変革によって記録への意識が高まったのは言うまでもありません。

誰の目から見ても恥ずかしくない記録であるためには、丁寧で論理的な文章が求められます。事業所・職員からの視点に立つ介護記録よりも、利用者・家族・第三者の視点から介護記録のあり方を考えなくてはなりません。しかしながら、「思ったこと・感じたことを書いていいのですか?」「個人情報はどうすればいいのですか?」など、介護記録について悩んでいる事業所はまだ多くあるようです。

個人情報保護法が全施行されたとはいえ、家族は「記録を見せてほしい」と切り出せないのが現状ですが、私は平成14年から介護記録の開示を継続して実践しています。その理由の一つは、「自分が家族であれば介護記録を見たい。どのようなことが記録されているのか、スタッフは意見や訴えにどのように対応してくれているのか、日々の状態を家族は知りたいはずだ。家族の安心は利用者の安心に繋がる。家族に記録を見て頂き一緒に支えてほしい」と思ったからです。

もう一つの理由は、ケアの質の担保には職員の考え方、ケアの視点を正しくすることが最重要と考えたからです。介護記録にしても、書かねばならない記録、やらされている意識では現場の工夫・気づきも薄れ、職員の態度・表情も暗くなり良い記録など望めません。管理者が見ていなくても良いケアが行われる組織に変えることが重要で、そのためには職員の意識を変えることが必要でした。

「利用者の立場で考えよう!」「家族の立場で考えよう!」をスローガンに、「介護記録=利用者の生きた証、日々の生活を綴る思い出の記録」と職員の意識統一ができた時、素晴らしい変化が起こり始めました。職員は利用者とのコミュニケーションが増え、陰日なたなく、生き生きと働くようになり、介護記録は「書きたい記録」に変わっていきました。職員をやる気に導いたのは家族でした。家族は記録開示によって、利用者の生活や組織・職員・ケアチームの実態が見えてきたのでしょう。家族からの感謝とねぎらいの言葉、激励のお便りを頂くことが増え、それは職員の心を揺さぶり、職員が家族にケアされていることに気づかされました。

そして、誰より嬉しかったのは利用者だったようです。家族との面会の頻度が増え、職員の明るい態度により居心地はぐっと良くなったのですから。このように、記録開示の実践は、素晴らしいものをみんなに与えてくれました。

著者  津田祐子

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