書籍のご紹介・施設から在宅へのケアプラン(ステップ1&2)

施設から在宅へのケアプラン施設から在宅へのケアプラン

施設から在宅へのケアプラン
(ステップ1&2)

介護保険適応型

津田式ケアプラン開発

教育出版センターより発行

初版発行:平成11月1日発行

【主な内容】

この手法『施設から在宅のケアプラン』が文部科学大臣賞を受賞しました。step1は、ケアプランの概論、チェックリスト、各種アセスメントについて解説しています。step2は各アセスメント表の項目の一つひとつについて解説している。サービス選定の根拠(エビデンスとなり、スタッフの勉強資料となる内容です。

「発刊によせて」

新たな高齢者介護システムの構築をめざして、平成12年4月1日から介護保険が実施されます。『要介護高齢者自らの意志と責任において、自分の生き方(生活の仕方)を決める。』そうしたことを側面的に支援する役割が、介護支援専門員です。

要介護者の自立を支援し、生活の質を高めるためのケアプランの作成は、介護支援専門員がキーパーソンとなるのです。

ケアプランの作成には、様々な視点からの情報収集が必要です。しかしながら、介護支援専門員の専門職種は様々であるため、問題点の把握は微妙に専門領域に片寄る傾向があり、また経験の差は、ケア提供のための必要な情報収集を満たさないことは歪めない事実です。

津田式ケアプランは、考案者自らがかかわってきた老人保健施設での、約800例に及ぶケアプランの実践のなかでの試行錯誤の中から生れ、現場での実用性、妥当性を第一に、施設だけでなく在宅におけるケアプラン策定も可能な手法として考案されたケアプランツールです。

高齢者にかかわる医師、看護、介護、リハビリ、家族、調理、ソーシャルワーカー、事務、管理職がそれぞれの各専門分野、視点からのチェックを行うことによって本人のあらゆる面での現状把握『自立度アセスメント表』から、ケアの検討『必要なケアのアセスメント表』へ、高齢者・家族・介護サービス提供者にとっての『ニーズ、満足度、充足度アセスメント表』、家庭復帰後の家族の介護力『在宅支援度のアセスメント表』、在宅サービスの必要性『在宅サービスのアセスメント表』が、自動的に表示され、それらのアセスメントに基づき『介護サービス計画書』や『サービス担当者会議録』が瞬時に要約記録されるのです。一見、各項目ともかなりのチェック数に感じますが、各専門領域から見てゆくと難なくチェックできる選定項目で、全ての職域のかかわりがチームケアとして反映されるのです。また、視覚に訴える自立度の変化の把握、自立度と在宅支援度は、第三者には理解しやすい様式だと思われます。

そして、介護保険におけるケアプランの目的と意義を反映し、高齢者、家族のニーズに応えることができ、ケアプラン策定にいたる複雑な流れを、合理的に処理でき、ケアのシステムづくりから見ても評価すべき教本だと感じます。

津田婦長さんとの初めての出会いは、平成10年度の徳島県介護支援専門員の実務研修の指導講師として。また、平成11年の徳島県介護支援専門員協会の設立にあたっては、副会長(広報委員長)として、いつも多忙にもかかわらず、何事に対してもパワフルに協会活動を支えて頂いております。仕事に対する専門職としての熱意、意識、追求心が、お話させていただく端端から熱く伝わり、出会って1年にも満たないのに、高齢者ケアにかかわる何年来の同志の感がいたします。

実践からの疑問点、疑問点からの気づき、気づきから対象者にとってよりよいケアプラン策定へ。津田式ケアプランは、常に状況を冷静に観察し、原因を分析、対応してゆく、介護支援専門員にとっての指南書。また、サービス提供事業者にとっては、職員教育、業務管理、業務評価の視点からも参考となり、様々な配慮がなされているケアプラン方式といえるのではないでしょうか。

是非ご一読頂きたい一冊です。

平成11年9月 徳島県介護支援専門員協会会長 大塚智子

「あとがき」

この津田式ケアプランの開発にいたるまでには、幾つかの思いと気付きや工夫があった。

その思いとは、一つは高齢者のケアに関わるすべての職種が、それぞれの専門職としての立場でチェックできる様式が欲しかったこと。二つめは、チェック様式に各職種の業務の内容を網羅したかったこと。三つめは、職務の遂行にあたり、その障害となる事柄が高齢者の問題であり、この三点が含まれたチェック様式でありたいと願ったことなどである。

次に気付きというのは、“ケアの科学性”の発見である。
『人はなぜこのような病気になるのか、誘発したものは何か、悪化する原因は何か、どのような食習慣か、なぜ血中のアルブミンやグロブリンや鉄分が低いのか、投薬・処置をしてもなぜ良くならないのか、なぜ生活意欲がないのか…』これらの疑問の解明は、『人体の構造を深く学ぶことにより、そのホメオステーシス(恒常性)を狂わせる原因が判明する』という気付きであった。歴代の多くの研究家が述べておられる、その理論こそが“ケアの科学”ではないか。体に病変が起きるのを予測する手立ては、生理・生化学・栄養学・解剖・病理・心理学などの理論にある。例を挙げると、栄養の偏りと体の浮腫、寝たきりと骨粗鬆症、鬱病と便秘などこれらはすべて原因と結果 の現れである。ここにアセスメントが存在すると気付いた。つまりケアを行うには、問題の原因を知ることと重症度の把握であり、優先する事項の判断や選定が必要となる。ケアの対象となるのは障害や病気のある高齢者であり、広い人体の学問(生理・生化学・栄養学・解剖・病理・心理学など)の中から、ある程度の範囲が限定できると考えた。そこで、各職種の業務を生かし、ケアの科学をミックスしたものを1枚の表にできないだろうかと考え、考案したものが必要なケアのアセスメント表である。

この結果、『アセスメントとは何か』が分かり7種類のアセスメント表を開発するに至った。
次にシステム上で工夫したことについて述べる。
大きく分けて7つあり、1つは、チェックを3つのレベル評価にし、文章の記述を減らし客観性を示したこと。チェック作業では、手を抜けばアセスメントに正確性が欠けることになるので、全部の項目のチェックをすることが望ましい。

2つめは、チェックからケアプラン策定までの過程を、一巡ですべての作業ができるようケアプラン策定作業の効率化を図った。

3つめは、一人の人のケアプランには、チェック用紙が1セット要るので毎回のケアプランに当たり用紙の削減を図るため、パソコンの画面 上にチェックリストを現しフロッピィーにデーターを収納する。各職種は業務の合間に担当分野の入力を行う。正確に入力すると、7種類の「アセスメント表」と「介護サービス計画書」は自動的に記録される。

4つめは、高齢者が個々に抱えている問題は非常に個別的であり、問題の量 も内容も違い、これはコンピューター技術が進んでもアセスメントに組み込むことが難しいが、欠かすことのできない事柄である。そこで、この個別 性を記入する欄がアセスメント表に必要と思い、記録スペースを設けた。

5つめは、職種や経験に関係なく誰でも立案できることが理想であり、本人や家族であろうとも策定できるケアプランが欲しいと考え、情報を集約しアセスメントする手法を考案した。このアセスメント表は、希望があれば本人や家族に見せて納得して頂きたいと思う。

6つめは、各現場は非常に忙しく、会議に集合できない場合もあるので、パソコンの画面 上でカンファレンスに参加出来る仕組みにしたこと。個々の病院や施設では、配置人員や職種に差があり、高齢者の重症度、業務の体系にも違いがある。また、日々の業務に加えて予定外の業務が生じたりすれば、ケアプランの検討会議の人員や時間の確保が困難な場合もある。これらの事態を考慮し各職種が集合しなくてもアセスメント・ケアプラン策定・カンファレンスが効率良く出来るシステムが望まれる。

7つめは、施設から在宅までのケアプランの策定としているが、施設と在宅の重なる部分を設け、前半部分だけ活用すれば施設ケアプランになり、後半部分だけ活用すれば在宅のケアプランになる工夫をしたこと。

次に、この津田式ケアプランのメリットと魅力について触れたい。
それは、7種類のアセスメント表の表現を棒グラフや円グラフ、折れ線グラフで示して状態を一見し分かりやすくしたこと。そして、本人・家族・施設の3側面 から評価できること。さらに、チェック項目やアセスメント表の結果により統計的なデーターが求められ、病院や施設を利用している者の傾向や各施設間や地域で比較・評価が可能なことであり、ひいては良い競争意識が育つと考えられる。

ケアプランは、ただ看護・介護の計画という部分的なものではなく、病院・施設の組織を動かすほどの、素晴らしく価値のある医療・福祉を統合するケアの実践計画である。
昨今、介護保険の制度のしくみが明らかになり、ますますケアプランの幅と広さと奥行きが限りないものだと確信することができた。

著者  津田祐子

一覧に戻る>>