日記

vol.005(2008年6月18日) メールマガジン第4号より

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こんにちは 津田祐子です。

平成14年11月30日〜12月1日、愛媛県伊予北条市にある聖カタリナ大学で「第22回 四国老人福祉学会大会」が行われました。総会の後、昨年21回大会における優秀学会賞の発表があり、私の研究発表が最優秀学会賞に選考され、大塚忠廣会長より表彰状を授与いただきました。
最優秀賞の対象となったのは、「管理機能を持つケアプランシステム」=「施設ケアサービスモニタリングツールの開発と試行」です。

実際施設でこれを使うようになり、言わなくても各職種でそれぞれ反省や気づきが生まれ、リハビリや厨房、デイケアスタッフが目に見えた活動を始め、学会発表も増え、看護や介護もケアや記録の見直しなど現場は活気を持って大きく変化してきております。

チームケアが充実してくるアセスメントです。是非、施設の利用者の方に使ってみてください。やったことの成果が見え、どの職種が頑張ったかがわかり、利用者や家族のニーズや満足度が明らかになります。必ずや「各アセスメント表」は皆様に沢山の気づきを与えてくれるでしょう。

利用者満足が得られるアセスメント

ケアの質を高めることを望まれる施設の方にお勧めします。
真剣にケアの質を高めたい、良くしようと考えておられる施設の方々には、参考になるアセスメントです。
介護保険制度で活躍する「介護支援専門員」はケアプランのモニタリングをしなければならないのですが、それには客観的に評価する物差しが必要となります。そこで、私はモニタリングの際の判断基準について、一つは、「何を」「どれだけ行ったか」(ケアの質の「量」「内容」の把握)を明確に、二つ目は、「現在と過去の状態の対比」「どの様に身体状態が変化したか」「どのようにADLが変化したか」を把握(ケアの質の評価)するようにしました。

そして定期的に利用者・家族にアンケートにて『ケアへの満足度や要望』を伺い、満足度が前回と今回で変化したか、要望の内容が変化したかをアセスメント表に現しケアの振り返りを可能にしました。
最近ではケアマネの友人から「過去と比較しケアの効果をいろいろな角度で測るアセスメントツールは津田式しか無いね。この考えが大事だと思うよ。」と言ってもらえるようになってきました。

――『 モニタリングの要素 』――
モニタリングは"量"と"質"でみること!
1."量"は、「全ケアサービスの把握」
2."質"の一つは、「全ケアサービスへの満足度」
3."質"の三つは、「身体状態の推移」
4."質"の四つは、「ケア充足度」

ケアの「量」「内容」の把握への考案

全体のケアサービスの量と内容の把握」について説明します。
ケアは、自分・家族・専門職の三者で行います。三者が「何を」「何日」行ったのか、月ごとに3ヶ月〜1年で集計すれば量として把握できます。
ここに用いるケア項目は、全部のケアを一見するために要約し(スペースに収まるように文章化)管理し易くします。

ケアの質の評価

ケアの質は何でわかるでしょうか?
それは、「利用者の方が前回より状態が良くなったこと」「満足度が高くなったこと」「職員が一生懸命した結果がプラスであると証明できること」で、それには現在のレベルと過去のレベルの比較は必須です。結果、提供したサービスの可否を評価できます。
そこで、過去と現在の状態を具体的な形で評価できるようなアセスメントツールを数種類開発しました。次の3つのアセスメント表がその主役になります。

ポジティブから把握できる反面、ネガティブな状態も見えて痴呆性高齢者や障害者の隠れたニーズの掘り起こしになり「もっとケアをして欲しい。」とデーターが代弁し訴える感も有り、顧客満足につながるケアの気づきや行動を発起します。

〈 ニーズ・満足度・充足度のアセスメント表におけるケアの質の評価 〉
「ニーズ・満足度・充足度のアセスメント表」は、本人や家族の要望の全容と提供しているサービスへの満足の程度とケア充足度を把握できます。ニーズ欄には利用者の要望と家族の要望が一覧できます。満足度には利用者と家族のケアに対する満足度が項目別にグラフ表示されますので前回と今回の差を把握します。充足度欄では体のケア、衣のケア、心のケア、食のケア、行動のケア、環境のケアの領域での充足度が棒グラフで該当状況を示し前回と今回で比較します。低下している場合、利用者自身の問題の有無あるいはケアサービスの不足が一目瞭然となります。

〈 施設ケアサービスモニタリング表におけるケアの質の評価 〉
このアセスメント表では、全体のケア量と身体状態やADLを対比してあります。ですから、総合ケア実数が妥当であれば効果を上げ身体状態やADLは良い方向に変動するはずで、悪化の変動がある時は総合実数や内容の見直しが必要と言う事になりアセスメント表によってケアの質が問われます。

サービスを受ける側と提供する側の状態を把握

ケアプラン策定の流れは、モニタリングが十分行われた後、次に計画書立案にあたり施設の人材・設備・資金・時間をどのように活用すればケア成績や品質を向上できるかという『ケアマネジメント』が行われます。
それには、しっかりとしたアセスメントによってサービスを受ける側である利用者や家族の状態・ニーズを把握することと、サービスを提供する側のスタッフ・施設整備面などについて把握しなければなりません。ここが実際の運用に重要となりますので津田式ではこの点についても工夫をしてあります。

○「施設日課アセスメント表」は、利用者の一日、週、月の生活状態やケア提供状況が把握できるようになっており、要介護レベルと自立している項目や援助しているケア、実施しているケアの評価やコメントなどが一見できます。

それぞれが分担しているケアサービスは、朝起きて夜休む24時間の生活ケアと週・月で行われるケアや行事を1枚に整理することが重要で、タイムリーな視点で「誰が」「どの時間」「どのように関わって」「どうなっているか」把握しなければならないと思います。メリハリのある過ごし方か、ケアサービスの提供ができているかを判断すべくこのツールを用意しました。

今、このアセスメント表は2部用意し、一部はご家族にお渡しし生活やケアの実態のご報告に使っておりますが、「大変良く分かる。」と喜んで頂いております。

〈 家族の状態把握の方法 〉

○「在宅支援度のアセスメント表」(居宅バージョンのみに存在します。)は、在宅へ復帰した場合において必要な在宅ケアサービスの種類や必要度を把握しておくツールです。また、在宅復帰の時点では在宅ケアサービスチームと連携を図りやすくするアセスメント表でもあります。
  家庭に帰った場合を想定し、家族が援助できる介護と第三者から受けたい介護をアンケートで聞き取るので、入所中から「何」を中心にリハビリやケア活動を起こすかが判断できます。

○「ニーズ・満足度・充足度のアセスメント表」では、「ニーズ」欄に家族の要望や意見などが記録されるので、施設に期待するニーズに限らず利用者に対して望むことや介護負担と思うこと、家族関係の悩みなども時に書かれております。そこで、職員が家族の気持ちを察して利用者に励ましやいたわりの言葉をかけるとか、家族関係を良くする仲介役もできます。
中にはアンケートを頂けないご家族もありますが、それも家族の隠れたニーズであって施設としてケアサービスの不備を反省し家族満足を得る方法を模索する引き金となります。

〈 スタッフ・施設の状態把握の方法 〉
「充足度」は、利用者自らが自分の体や心・行動を充足するように努めた場合と家族や施設スタッフからのケアが充足している場合に高い値を示します。要介護状態が重い人の場合は施設スタッフの成果を再現します。

○「施設日課アセスメント表」は、利用者の一日、週、月の生活状態やケア提供状況が把握できるので、提供しているサービスのもれがないか、メリハリのある生活支援ができているかを把握します。

○「ケアサービスモニタリング表」は、医師・看護・介護・リハビリ・厨房・相談指導の各職種が行ったケアの実日数を表示しておりこの実日数がケアの実態なので、これを吟味します。実際に現場ケア記録との整合性を査定したり、利用者の要介護状態に妥当なケア実日数かどうかなどを検討します。

 以上述べましたように、津田式ケアプランでは「人」「物」がどのように活動したかについてもチェックリストやアセスメント表に「成績表」として提示いたします。

 これまで、ケアプランシステム考案にあたって「客観的な評価」に耐えることを念頭に置いて開発を進めてきました。またそれと併せて平易な文章で理解し易い書式にすることにも心を砕きました。
  その結果、一定期間ごとに利用者の状態の変化を追跡することが容易になり、自分達がなにをしてきたのか、これから何が予測されるのか、どう対処すべきなのかを携わる職員で共有することが出来、チームワークが向上しました。

一覧性が高く理解しやすいという特徴は、新人スタッフが参加したときも短期間で職務内容を理解させることを可能にしました。ご家庭への説明などにもほとんどそのまま利用できるなど将来の情報公開に役立つことを実感しています。

忙しい業務の間を縫ってのチェックリストの作成、アセスメント表を元にした会議でしたが、最初はとまどっていたスタッフも「ケアの品質向上」という成果がみえてきたことで費やした時間を上回るメリットを認めてもらえました。

「ケア品質の向上」は利用者・家族・スタッフの共通の目標でしたが、それを共通の言葉で評価できるようになると思います。自分達が何をしているか把握すること・説明できることは、限られた人手・時間・資源を有効に使うように変革する原動力になりました。ひいてはそれが介護に携わるものの競争力の強化にも直結します。

創意工夫功労者として「文部科学大臣賞」を頂いた理由

「身近な現場の体験を通し現場の苦労や課題を解決する工夫が至るところにある!このことが創意工夫者として評価を頂いたのですよ。」と徳島県保健福祉医療政策課の方々より激励の言葉を頂きました。
本当に、「現場からの気づきと工夫」という一言につきるのではないかと思います。
大変なケア現場を目前に改善と改革の必要に迫られたから・・・と言えましょう。なぜ?どうやれば?と思案しつつ、複雑な課題を一つ一つ紐解き数年研鑽してまいりました。 

大まかに挙げると次のようなシステムの工夫を行っております。

★ 忙しい現場に優しい仕組み
  効率良くデーターを入力できる仕組みとして、標準化したチェック項目をチェックボックスやラジオボタン入力できるように工夫しています。2回目以降の入力では、前回のチェックを変更するようにしてチェックの誤差を減らし、入力時間の短縮を図っています。

★ 煩雑な作業を効率良く
チェック→アセスメント→サービス計画書作成の流れをパソコンで可能にしています。

★ 職種の専門性を生かす
各職種別にチェックリストを用意し、専門性を活かしてあります。

★ 客観的、科学的、効率的なアセスメント
各職種が入力したチェック項目をトリガー(誘因項目)として、無駄なく各アセスメント表に活用します。自立項目や正常の状態項目ばかりを集めて自立度アセスメント表を作り利用者がいくつ該当したか全項目数で除して割合を出し棒グラフで表示、前回と今回での比較をするとレベル変化が分かり客観的アセスメントが出来ます。また、問題項目を集めて問題の内容や傾向とケア目標の関係をあらかじめグループ化し判断を容易にするなど標準化した各アセスメント表はソフト上で瞬時に作成され作業の効率化を図ります。

★ 幅広く偏らない多面的な評価
開発者が自己の利益を求めて作ったのではなく、純粋にスタッフ、利用者、家族、施設の立場を考えどのようにすればみんなが良くなるのだろうと一心に考え研究してきました。結果、その熱意が、利用者を良い面と問題面の双方から把握するアセスメントツール、利用者の評価だけでなく施設やスタッフのケア実態も評価するアセスメントツール、利用者の帰宅ニーズと家族が考えている介護ニーズを総合的に把握できるアセスメントツールなど幅広く偏らない、多面的な判断ツールの考案をしています。

★ 利用者・家族の満足度を得る
本人や家族から満足度のアンケートに回答を頂きますと、「満足」と返事を頂くより、「まずまず」「我慢」「改善希望」やコメント記載がある方がケアの反省になります。介護保険制度でいうケアプランは、利用者や家族のニーズに添ってプランを立案しなければならないので、どのようなニーズがありどのようにすれば満足が得られるか、考えざるを得ません。そこで、次にアイデアが誕生します。ご家族への「お便り」発送や「ケア記録開示の実践」も、気づきから生まれてきました。それらの作成に蓄積したデーターが役立ちます。

★ ケアプランの妥当性
介護サービス計画書を作成するには、その根拠が必要であり、各アセスメント表にその根拠がまとめられています。自立度の変動、充足度の変動、モニタリングでのケア提供量と内容、身体状態やADLの変化が客観的に見えるので、ケアの効果や課題が把握し易く
必要なケアを選定できます。

★ 施設から在宅復帰に運ぶケアプラン策定を
介護保険制度は、施設から在宅復帰を推進していますので、本人の自立度、家族の支援度を考慮して必要な在宅ケアサービスを選定できる工夫をしています。

発表以来、色々な方々から評価や感じた質問を頂きました。
これからも心優しいケアスタッフが報われるようなツール、利用者が生き甲斐をもてるケアのあり方をケアプランのシステムに取り入れた、介護保険制度の「理念」に添い、ケアの質を担保する手法を開発研究していきたいと考えています。

 

〈 療養病棟で使用した結果:病院機能評価委員からの評価 〉
老人保健施設で開発してきたケアプランが徐々に姿を見せ始めた頃、協力医療機関の理事長から「病院の療養病棟でも津田式ケアプランを使いたい。」との指示があり、それまで使用していた他の方式を中止し平成11年から津田式を導入しました。3年間ずっとケアプランを立案してきた介護支援専門員は、とても気に入ってくれ「デスクワークしていても各ケアの実態が手に取るようにわかりびっくりさせられる。魅力的なシステムでケアの管理ができる方式だ。」と言ってくれております。
この秋、この病院では(財団法人)日本医療機能評価機構による第三者の目から病院を評価するという『病院機能評価』の審査を受けたそうです。病院機能評価とは、医療の質の改善・向上のため医療機関の公正な評価を行うことを目的に1995年に厚生省・日本医師会等の出資により設立された(財団法人)日本医療機能評価機構が定める基準を達成しているかどうかの審査認定を行うもので、2002年11月18日現在全国で797病院が認定されており、患者が病院を選ぶ際の一定の基準となるそうです。
審査は、書面審査と訪問審査があり、訪問審査は、病院理念と組織的基盤、地域ニーズの反映、診療の質の確保、看護に適切な提供、患者の満足と安心、病院運営管理の合理性の6項目の視点より約600項目にわたり、院長、看護部長、事務部長の経験を有する第三者5人により審査が行われ、12月19日めでたく審査合格の通知を頂いたと連絡がありました。

その訪問審査の時に、サーベイヤーの諸先生方が津田式ケアプランで作成し実践している実態をご覧になり、「大変良く工夫されたケアプランです。素晴らしい! 数値でケアの集績や評価もできており現場の実践がわかる。評価に値する開発です。」と、独創性・科学性・実践性など高く評価して頂いたとの事で、本院の総婦長や現場スタッフの皆さんからもお礼の言葉を頂き、とても感謝されました。

最近の出来事

平成14年12月1日(日曜日)は、岡山県岡山市「福武ジョリービル2F」で、日総研出版主催による記録セミナー「情報を共有化できる!看護・介護記録を効率良く書く方法と実践するノウハウ」というテーマで講演を行いました。

受講された方のご意見によれば、介護現場でのケア記録様式や内容について、どの様に書けばいいか、ケアプランとの関係はどうするか等の悩みや課題があるようでした。当施設での実践をいろいろお話ししたところ、具体的で分かり易い、参考になる様式や工夫点は早速取り入れてみたいと複数の方から感想を頂きました。

「ケア記録」については、「本人・家族のニーズに添ったケアプラン」を数年間追求してきた結果、ケア記録の基本事項、必要な記録内容、ケアの質が評価できる記録のあり方などが少しずつ明らかになってきたと感じています。

平成14年12月14日(土曜日)は、広島県広島市「エソール広島2F」で、日総研出版主催によるケアプランセミナー「個別性のある施設ケアプランの立て方・書き方と実践するポイント」というテーマで講演を行いました。

ケアプランセミナーは岡山、名古屋、高知、大阪、今回の名古屋で5回目ですが、毎回参加者の方々から「講義を聞いて悩みが解決できた。」「チェックやアセスメントの見落としがない。」「平易で分かり易く、ケアが管理できるのが魅力。」「本当にこのような格安の金額でソフトが購入できるのですか? 是非使ってみたい!」など嬉しいご意見を頂きとても励みになっております。

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